【比較表付き】飲食店にかける保険の選び方
ざっくり言うと
- 店舗総合保険とは何?
- 店舗総合保険の保障範囲を比較
- 店舗総合保険と合わせて加入したい保険・特約の種類
飲食店を経営する上で避けられないリスクには、火災や水漏れ、地震などによる店舗の破損をはじめ、食中毒による賠償責任や休業による損失など、実にさまざまです。
これらのリスクをすべて回避する対応策が必要であることは言うまでもなく、もしもの時の損害を補償してくれる飲食店向けの保険への加入も不可欠となりますが、飲食店向けの店舗保険には、いったいどのような種類があるのでしょうか?
飲食店リスクを補償する保険種類をはじめ、どのような保険に加入したらいいのか解説していきます。
事故などのリスクをカバーする店舗総合保険とは?
すべての損害保険会社で取り扱っているわけではありませんが、飲食店を経営されている方向けの保険として「店舗総合保険(呼び名は保険会社によって異なります)」というものがあります。
この店舗総合保険は、加入することで以下のような損害を補償してくれます。
- 火災、落雷、破裂・爆発・風災、雹(ひょう)災、雪災
- 給排水設備事故の水ぬれ等、騒擾(じょう)、労働争議等、車両・航空機の衝突等
- 建物の外部からの物体の衝突等、盗難、水災
- 電気的・機械的事故、その他偶然な破損事故等
- 商品・製品等の損害
- 店舗の休業による損害
店舗総合保険の補償内容は、取り扱っている保険会社によって補償の範囲内の場合とオプション(特約)の場合に分かれており、保険会社ごとに店舗総合保険にも違いがあります。
飲食店の経営を行う以上、火災や水漏れなどによる建物や什器の損害など、事故や天災のリスクとは常に隣り合わせです。
そのため、多くのリスクをカバーできる店舗総合保険へ、あらかじめ加入しておく経営者は多いです。
店舗総合保険の補償範囲・保険金を比較!
ここからは、保険会社Aと保険会社Bを例に店舗総合保険のおもな補償範囲や保険金の例について紹介していきます。
補償内容 | 保険会社:A | 保険会社:B |
---|---|---|
店舗総合保険 (一般物件用) |
企業総合保険 (休業補償条項プラン) |
|
保険料 | 最大支払限度額: 1,800万円 年間保険料: 約95,000円 |
公開されていません |
建物、設備・什器(じゅうき)等、商品・製品等の損害 | 〇 | 〇 |
火災 | 〇 | 〇 |
風災・雹災・雪災 | 〇 | 〇 |
水災 | 〇 | 〇 |
落雷 | 〇 | 〇 |
破裂・爆発 | 〇 | 〇 |
給排水設備の事故等による水濡れ | 〇 | × |
盗難による損傷・汚損 | △ 商品・製品等 総合補償特約 |
〇 |
建物外部からの衝突・飛来 | 〇 | 〇 |
騒擾・労働争議による暴力行為・破壊行為 | 〇 | 〇 |
休業損失 | △ 休業損失補償特約 |
〇 |
地震による損害 | △ 地震による火災補償 |
△ 地震危険補償特約 |
休業日数短縮費用 | △ 仮店舗・移転広告・外注など |
〇 |
ビル総合・破損危険補償 | △ 電気系統のトラブルなど |
× |
事務用機器補償/設備・什器等総合補償 | △ | × |
高額貴金属等不担保特約 | × | △ 30万円以上の建物内の設備や商品 |
食中毒 | × | 〇 |
比較表を見てお分かりの通り、同じ店舗総合保険でもその保障内容には微妙な違いがあります。
店舗総合保険は、飲食店を経営しているオーナーの考え方をはじめ、事業規模、立地条件などの項目によって総合的に判断して、補償範囲を決定するべきものです。
そのため、店舗総合保険に加入する際は、店舗総合保険を取り扱っている保険代理店などに尋ねてみるべきでしょう。
また、店舗総合保険は損害保険の1つであることから、保険金額が生命保険のように定額で支払われるものではないことも知っておく必要があります。
保険金の支払事例
内容 | 休業日数 | 休業保険金 | 財物保険金 |
---|---|---|---|
ダクト内の塵(ちり)や油に引火。厨房を焼失し、休業。 | 90日 | 605万円 | 351万円 |
夜間、車両が飛び込み逃走。店舗入り口を破損し、休業。 | 13日 | 130万円 | 181万円 |
隣接店舗の火災により類焼。什器(じゅうき)備品等を焼失し、休業。 | 42日 | 420万円 | 760万円 |
出典:「損保ジャパン日本興亜 お支払事例 料理飲食店」より
上記表の支払事例のように、損害の内容、休業日数など、その時に生じた損害によって補償される保険金額が異なるという点が、損害保険の特徴であるため、保険会社間で保険金額比較をすることは難しいといえます。
それぞれの保険会社が取り扱っている店舗総合保険を比較する際は、「どのような場合に保険金が支払われるのか」といった「保険金が支払われるための要件」を必ず確認しておくようにしましょう。
保険料を支払っているのにもかかわらず、いざといった時に保険金が支払われないのであれば、そもそも最初から保険加入している意味がありません。
店舗総合保険を取り扱っている保険代理店などに尋ねる時は、保険金が支払われるための要件についても、補償範囲と共に尋ねることが重要です。
店舗総合保険の様々な特約
店舗総合保険の特約には、様々な種類がありますが、ここでは、借家人賠償保険特約と施設賠償責任保険特約を説明します。(保険会社によって呼び名が異なる点はあらかじめご了承ください。)
借家人賠償保険特約
借家人賠償保険特約とは、店舗や事務所等を借りている人が、火災、破裂・爆発、盗難、給排水設備の使用または管理に起因する漏水、放水等による水ぬれなどに起因して借用戸室を損壊してしまった時、貸主に対して損害賠償責任を負ってしまった時に補償されるオプション契約です。
また、火災、落雷、破裂・爆発、風災、雹(ひょう)災、雪災、盗難、給排水設備に生じた事故または被保険者以外の者が占有する借用戸室で生じた事故に伴う漏水、放水等による水濡ぬれ、借用戸室の外部からの物体の衝突等、騒擾(じょう)、労働争議等によって、借用戸室に損害が生じた場合、貸主との契約に基づき、自己の費用で修理を行ったときにも補償されます。
大まかにまとめると「戸室を賃貸している方向け」のオプション契約になります。
施設賠償責任保険特約
施設賠償責任保険特約とは、店舗の安全性、構造に問題があった場合や、顧客にけがをさせてしまったり、顧客の物を壊してしまったりした場合に補償されるオプション契約です。
顧客層や損害の程度によって左右される部分ではありますが、飲食店を営んでいる以上、どのような顧客が来店されるかわかりません。
いわゆる「クレーマー」による損害も予測できることから、ケース・バイ・ケースでオプション契約を検討したいところです。
不動産屋から勧められる保険に入らないとダメなの?
時には賃貸テナントを扱っている不動産屋から、店舗総合保険について勧められることもあると思いますが、まずは、「いったん持ち帰って他の保険と比較検討することが大切」です。
不動産屋が勧めてくる店舗総合保険の補償範囲が最適であるとは限りません。補償範囲が広すぎることが原因で、不要な保険料を支払う可能性も考えられます。
店舗総合保険は、現在の事業規模に即したものに加入し、規模が大きくなったら都度、補償額を見直していくといった細かな調整を図るのが、効果的でしょう。
そのため、事業規模をしっかりと分析できる保険代理店や専門家にアドバイスを求めるなども、店舗総合保険の加入契約をする上で1つの検討策と言えます。
店舗総合保険とあわせて加入を考えたい保険・特約の種類
店舗総合保険は、これまで解説した多くの事故をカバーすることができますが、飲食店で起こりうるすべてのリスクをカバーできるものではありません。
最後に、店舗総合保険ではカバーできないリスクごとに、加入を検討したい保険についてご紹介します。
地震による損害を補償する「地震保険」
地震保険に加入していない場合、地震や噴火または津波を原因とする損壊・埋没・流失による損害のほか、地震などによる火災が生じた際の損害についても補償の対象となりません。
- 地震が原因で火災が発生、家が焼けてしまった
- 地震が原因で家が倒壊してしまった
- 地震が原因で津波が発生、家が流されてしまった
上記のような損害を被った場合に地震保険に加入していなければ補償されません。また、地震保険は単独で加入することができないという特徴もあります。
地震保険の保険金支払は、平成29年1月1日より4区分に分けられることになり、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」のいずれかの認定によって、支払われる保険金が異なります。
ただし、地震保険は、住んでいる都道府県によって支払保険料は異なりますが、保険会社によっての支払保険料の違いはないという点も押さえておきたいポイントです。
休業損失を補償する「店舗休業保険」
店舗休業保険とは、その名の通り、店舗を休業することによって売上減少などの損害を補償するための保険です。
先に解説した「損保ジャパン日本興亜 お支払事例 料理飲食店」の表にある通り、以下のような場合に損害が補償されます。
- ダクト内の塵(ちり)や油に引火。厨房を消失し、休業
- 夜間、車両が飛び込み逃走。店舗入り口を破損し、休業
- 隣接店舗の火災により類焼。什器(じゅうき)備品等を焼失し、休業
店舗総合保険は、飲食店が抱える幅広いリスクを回避できる特徴があることから、まさに飲食店向けの損害保険と言っても良いでしょう。
現在、保険会社のホームページや電話からのダイレクト販売を利用し、店舗総合保険に加入する方法がある一方、保険会社によって補償内容が違うため、単純比較することは簡単ではありません。
周囲に相談できる専門家がいない場合は、複数の保険会社の商品を取扱っている代理店に相談してみるなど、直接会って詳しい説明や比較シミュレーションなどのサービスを受けてみることが望ましいでしょう。
画像:写真AC
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