【プロ店長に聞く】スタッフとの毎日の面談が店の強化につながる 第9回 後編 │株式会社O.B.U Company 山崎洋介店長
福岡県の中心地・博多にある大人気のエンターテイメント施設「キャナルシティ博多」内に店舗を構える、株式会社O.B.U Companyの「串と水炊 博多 松すけ」。
鶏肉にこだわって作られている串焼と水炊は絶品で、県外や外国からのお客様も多いそうです。
さまざまなお客様に対応するためのスタッフ教育の秘訣は、覆面調査や振り返り&目標シート、毎日の面談など“たえず気づきをフィードバックとして得られるようにする仕組み”にあるようです。
「プロ店長に聞く」第9回後編では、前編に引き続き、「串と水炊 博多 松すけ」の山崎洋介店長にお話をうかがいます。
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覆面調査と2種類のシートで、振り返り&感動アップ

山崎洋介店長
―教育面にもかなり力を入れられていて、その一環として、調査員による覆面調査をおこなっているとうかがいました。具体的にはどのように活用されているのですか?
会社自体が方針として覆面調査(編集部注:事前通知せずに客として調査員が来店し、接客面を調査すること)を取り入れてくれていて、毎月レポートが来ます。
さらに、店舗が入っているキャナルシティでもまた別の覆面調査をやってくれているので、2つのレポートを活用していますね。
それらはいいことも悪いこともすべてお客様が出してくださった意見なので、そこからどう接客を改善していけるか、スタッフ自身で考えてもらうことに役立てています。
具体的には、月1回の全体ミーティングの前に、社員にもアルバイトさんにもレポートを読んでおいてもらいます。
そして“気づきシート”というものに、何がよかったか、悪かったか、どう感じたか、改善点などを書いてもらっています。
―社員だけでなく、アルバイトさんとも覆面調査の結果を共有されているんですね。
そうですね。
そして、その気づきシートをふまえて「今後どう改善していくか」については、“感動アップシート”というものに書いてもらい、ミーティングで話し合います。
店のやり方としてどうしても変えられない部分もありますが、それ以外の部分では「じゃあこういうふうに変えていこう」と、みんなの意見をできるだけ活かすようにして、目標を設定していますよ。

気づきシートと感動アップシート
―感動アップシートは、気づきシートと具体的にはどう違うのですか?
気づきシートではスタッフが気づいた内容を書いてもらい、それをどう改善したらいいか具体例を挙げてもらったり、目標を数値化したりするのが感動アップシートですね。
「何杯売ろう」とか「何回言おう」など、具体的で定量的な目標設定用のシートでもあります。
―2種類のシートがあることで、レポートを読んだ感想を整理し、次の具体的な目標設定につなげられるんですね。
もし覆面調査で悪い結果が届いた場合でも、それをスタッフに素直に伝えるということでしょうか?
意識や緊張感を持ってもらうために伝えますよ。レポートには「輝いていたスタッフ」の欄もありますが、「ちょっと不満に感じたスタッフ」の欄もありますから。
ただ、僕は場の雰囲気作りをすごく大事にしているので、トップである僕自身からガツンと厳しく言う……ということはあまりやっていません。
明らかにダメなときは、いきなりビシッと言うときもありますけど、基本的にはホール・キッチンの直属、アルバイトリーダーなど、できるだけそのスタッフに近い人から伝えてもらって、気づかせるようにしています。
そっちのほうが効果的かな、と。
―覆面調査やシート類のフィードバックの効果は感じられますか?
レポートは1つの評価であり、それがすべてではないと思っています。
でも、覆面調査では200点満点中、平均185点以上(最優良店の目安)を目標にしていて、前年はそれを達成できたので、1つの成果を出せてはいるなと感じています。
―覆面調査をされるということは、個人だけでなくお店全体がレベルアップしないと、いい評価は得られにくいですよね。
そうなんです。だから、社員の人事評価に関しても、覆面調査の点数が給与に反映されるようになっています。
スタッフのモチベーションアップを上げつつ、結果的に店全体のレベルアップにつながっているんだと思いますよ。
ロールプレイングや社員の配置にこだわって、働きやすさをアップ
―「S1サーバーグランプリ」や「居酒屋甲子園」など、接客のコンテストにも積極的に参加されているそうですね。
僕自身も「S1サーバーグランプリ」(編集部注:全国各社の飲食店で働くスタッフを対象とした、NPO法人「繁盛店への道」が主催する接客技術を競うコンテスト)には3回出場しています。
出ることによって、改めて「なぜ自分がサービス業を志したのか、サービス業のどういうところが好きなのか…」など、いろいろなことを考えるきっかけになり、サービスの原点や初心に立ち返ることができます。
そのような思いもあり、スタッフには積極的に参加を勧めていますね。
―お店全体のレベルの底上げをするために、どういったことに気をつけて教育をされていますか?
新人さん向けのカリキュラムは「2週間で一人前にすること」を目標に作っています。
それにプラスして、ベテランスタッフによる「松すけ流」のオリジナル接客ロールプレイングを撮影し、動画を共有しています。

接客ロールプレイング動画のワンシーン。撮影してスタッフに共有する
「マニュアル+動き」というやり方ですね。
うちの店独特の提供方法などについて、「こういうところがポイントなので注意してくださいね」というところを動画で共有しているのは、オリジナルの教育方法かな、と。
―確かに、動画まで用いて教育をおこなっているお店はあまり聞きません。その独特の提供方法とは、たとえばどんなものが?
とろ玉(半熟の串焼)は「黄身が出てくるので、取り皿を使ってお召し上がりください」と接客時に言ってもらったり、看板商品のねり(塩つくね)は「温かいうちにどうぞ」と言ってもらったりするなど、「これを必ず言ってください」というのをロールプレイングでわかりやすく教えるようにしていますね。
― 一方で、マニュアル化しづらいような対応については、どうされているんですか?
イレギュラーなことにも対応できるように、店内の要のポジションには社員を置くようにしています。
ホールは基本的に4~5人なんですが、クローズキッチンなので、ホールとキッチンをつなぐ一番重要なデシャップ(=司令塔の役割の人)のポジションは社員。お客様へのファーストコンタクトやお見送りも社員です。
そういった核となる部分をしっかりさせています。
アルバイトさんがマニュアルで対応できないことは、どうしても、トラブルが起きた場合に確認作業が必要になってしまうので。
―大事なところに社員さんがいてくれると、アルバイトの方も安心して動けますね。
社員の目配りが行き届いている分、アルバイトさんもわからないことが聞きやすいとも思います。これはうち独特のやり方かもしれませんね。
―逆に、それでアルバイトさんが育たない…ということは?
そういう面もあるかもしれませんが、アルバイトさんにやらせ過ぎると負荷をかけてしまうので、大事なところは社員がやったほうがいいと思います。
アルバイトさんには、お客様とのPOC(ポイント・オブ・コンタクト=接点)を増やし、お客様を笑顔にすることに集中して頑張ってほしいので、名刺をいただけるように精一杯おもてなしをしたり、サプライズをおこなったりすることに力を注いでもらえれば。
―アルバイトさんが、お客様にサプライズをおこなうことがあるんですか?
そうなんです。お客様との会話の中で、たとえば記念日のお食事で来店されたことがわかれば、サプライズプレートを出すよう伝えています。
サプライズを週に1回はやろうね、とマニュアル化もしていて、それをアルバイトさんの評価に取り入れてもいるんですよ。
毎日の面談でスタッフとのコミュニケーションを

山崎店長が毎日の面談に使っているシート
―マニュアルが細かなところまで行き届いていて、驚きました。スタッフのモチベーションを上げるために、山崎店長が意識していらっしゃることはありますか?
面談の時間を作ることですね。毎日必ず、アルバイトさんのシフトの終わりがけに5~10分間くらい面談をするんですよ。
今日一日の振り返りを書いてもらうんですが、必ずしもそのフィードバックだけとは限らず、日常会話とかもするように心がけています。コミュニケーションの一環としてやっているので。
―面談の効果は感じられていますか?
日々細かいことを話しているおかげで、いきなり大きな壁にぶち当たらずに済んでいるかなと感じています。
「あの持ち方だとドリンクがこぼれやすいから、こっちのほうがいいと思うよ」など、小さなこともしっかり話し合えているので、毎日の面談は大切な時間です。
―最後に、山崎店長が大事にしているポリシーをお聞かせいただけますでしょうか。
松介事業部の経営理念に、【MakeHappiness~飲食業を通じて幸せを創造する~】があります。
僕たちOBU社員は、全員がBeHappy宣言という【個人理念】をそれぞれ掲げています。
ちなみに、僕のBeHappy宣言は、【ちょっとした気配りや思いやりを大事に心を配ることで人に幸せを与えます。】です。
このBeHappy宣言が判断基準の一つとなり、お客様満足の最大化に繋がると信じています。
それとシンプルですが、飲食人の在り方として「元気、笑顔、感謝」をいつも意識しています。
―そこにはお客様の笑顔だけでなく、スタッフの方の笑顔も含まれているのでしょうか?
そうですね。まずは自分自身が笑顔でいることが大事ではないでしょうか。
「自分は元気か」「笑顔でいるか」というところから、スタッフへの笑顔、お客様の笑顔へと意識を広げていくことを、今後も大切にしたいと思っています。
―常にお店全体のレベルアップを図るため、スタッフとの毎日のコミュニケーションを欠かさない山崎店長。
皆さんの笑顔で元気に働いていらっしゃる姿が、とても素敵でした。どうもありがとうございました。
(2017.3.22)
写真:串と水炊 松すけ様にて撮影
串と水炊 松すけ
所在地:福岡県福岡市博多区住吉1-2-82
キャナルシティ博多グランドハイアット福岡B1
電話番号:092-263-7840
営業時間:
【月~土】
ランチ 11:00~15:00(L.O.14:30)
ディナー 17:00~23:00(L.O.22:00)
【日・祝日】
ランチ 11:00~15:00(L.O.14:30)
ディナー 15:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:年中無休
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