【プロ店長に聞く】「常にブレないこと」をモットーに、変わらない味を提供し続ける 第8回 後編 │株式会社和J.ap 下谷公治マネージャー
広島県有数の繁華街・広島電鉄の胡町駅の近くに店舗を構える株式会社和J.apの「炭焼ゑん 流川店」。新鮮な九州地鶏を多数使用している焼鳥店です。
焼鳥は常に最高の状態でお客様に提供できるよう、心を込めて1本ずつ丁寧に仕込まれています。
「人気の一番の理由は味」だという、メニューや味へのこだわりとは、どのようなものなのでしょうか?
「プロ店長に聞く」第8回後編では、前編に引き続き、「炭焼ゑん 流川店」の下谷公治マネージャーにお話をうかがいます。
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変わらない味が支持されている

下谷公治マネージャー
―ベテランスタッフが多いことが、お客様の居心地のよさにもつながっているのではないかというお話がありましたが、それ以外にもリピーターの方が多い理由は何かあると思いますか?
それはもちろん、焼鳥の味だと思います。
うちはどちらかというと、新しい商品やメニューをどんどん出していく店ではなく、いつ来ても同じ味があることを心がけている店です。
「継続は力なり」で、変わらないものを出し続けてきたのがリピーターにつながっているのではないでしょうか。
「やっぱり、ゑんの焼鳥はおいしいね」と言ってくださるお客様が多いので。
―季節に応じた新メニューなどは提供されているんでしょうか?
スタッフのみなさんが情報を仕入れてきて、おもしろそうな素材などがあったら焼いてみたりはしていますが、基本的なグランドメニューは13年間ほぼ同じです。
ベースはほとんど変えず、ブレずにやっていますよ。
食材の値段の高騰などもありますが、できるだけ仕入れるものは変えず、昔から同じものを焼き続けているんです。
なので、お客様から「いつ来てもおいしいね」ということは本当によく言っていただけてありがたいです。
―「変わらない味」が、お客様から支持を集める大きなポイントの1つという印象を受けました。
僕もそこはすごく大事だと思っています。とにかく日々同じ味を、クオリティの高いものを…ということは、うちの店の大前提ですね。
継承していく難しさ
―変わらない味をずっと維持するのは、難しいのでは?
今は長く勤めてくれているスタッフさんばかりなので、味の維持については安心感がありますね。
メニューを変えないことに加え、同じ人が働き続けていることもうちの店の大きな強みです。
うちの社長も「同じものを焼いていても、焼く人が変わるとお客様は不安になるから、常にお前が焼き場に立って焼き続けろ。そこで安心感が生まれる」と、よく言っています。
―ということは、焼き場に立つ方は固定されているんですか?
そうです。コロコロ変わることはありません。お客様から常に見られるポジションなので、意識はしていますね。
―なるほど。見慣れたスタッフさんが焼いてくれることが、お客様の安心感につながるんですね。ちなみに今、悩まれている課題はありますか?
この先15年、20年…と、老舗として店を長く続けていくためには、やはり新しい人に焼かせて育てていく必要もあると思うので、その切り替えのタイミングはすごく悩んでいますね。
今はすごくいい状況で仕事ができているんですが、同じ人に焼かせる安心感と、次を育てなきゃいけない使命感との間で、葛藤や不安もあります。
―味の教え方や引き継ぎ方は、どこのお店も悩まれていることだと思います。これまでは、味の継承はどのようにおこなわれてきたんですか?レシピがあるのでしょうか?
基本的に、細かく教えるというよりは食べて覚えてもらう形なんですが、どうしても人によって少しずつ塩加減や焼き加減が変わってしまうので、個性は出ます。
ただ、「塩は○グラム」「○分焼く」というマニュアルは作っていません。そこまで固めてしまうと、悩んでしまうスタッフさんもいると思うので。
―スタッフさんの個性を容認しつつ、味やクオリティを保つ、と。
今後、焼き場の人材を新たに育てる際にも、僕が焼き方などを強制するのではなく、その人自身でいろんな人の意見を聞きながら成長していってもらいたいですね。
社長もスタッフ全員に「自分が食べてうまいと思うものを出していけ」と言ってくれているので。
お酒の揃え方
―ここまではお料理についてうかがってきましたが、お酒に関してもこだわりなどがあればお聞かせください。
基本的にはビール、焼酎、ウイスキーなどがよく頼まれるので、しっかり揃えています。
ワインも焼鳥に合うと思っているので、さまざまな種類を選んで取り入れていますよ。
―お客様のニーズに合わせて、お酒のご提案などもされているんでしょうか?
お客様が飲みたいものを飲んでいただくのがベストですが、ある程度いろいろ試されてきた方に対しては、「新しい発見があれば」という気持ちで、こちらからお勧めさせていただくこともありますね。
もちろん「白モツに合うものを」などのリクエストに応えることもありますし、お客様から「こういうお酒を置いてよ」と言われたものを入れてみたりもします。
―ニーズを取り入れてもらえることで、お酒のセレクトという面においても、お客様からスタッフさんへの信頼感が増しそうです。
最近、お酒に関しては、お客様の感覚が結構変わってきている気がするんです。お酒があまり飲めないとか、積極的には飲まない方も増えてきているように感じていて。
そういう方たちに合わせて、近頃は飲みやすいカクテルを作ったり、果実酒を増やしたりもしているんですよ。
―中には、お酒をまったく飲まれないお客様も?
もちろんいらっしゃいます。でもそれはそれで、うちの焼鳥だけを味わいに来てくれているんだと思うと僕はうれしいですよ。
お酒を飲まれないお客様も大事にしていきたいですね。
―最後に、下谷マネージャーの今後の目標やポリシーを教えてください。
僕はこの店を流川で1番の焼鳥屋にしたいので、「とにかくこの場所にあり続ける」ということをポリシーにしてやっていきたいですね。
どうしてもコンディションやモチベーションには波が生じるので、日々同じことをやり続けるのはすごく大変なんですが、そこをグッと踏ん張って、「お客様に常に同じクオリティのものを提供する」「常にブレずにやっていく」ということを僕の中では信条にしています。
お客様に「ゑんは、いつ来てもおいしいね」と言っていただけるのは、本当にうれしいので。
―メニューや味を変えないことの難しさに熱く向き合い、常にブレないことを日々の中で強く意識されている下谷マネージャー。
「いつでもお客様に最高の焼鳥を」という気持ちがしっかり伝わってきて、とても素敵でした。どうもありがとうございました。
(2017.2.22)
写真:炭焼ゑん 流川店様にて撮影