宇和島産ブランド養殖真鯛「鯛一郎クン」の魅力
鯛は飲食店にとって欠かせない食材です。祭事や祝いの席を飾るのはもちろん、日常のメニューとしても、刺身、カルパッチョ、グリルなど、幅広く活用できるため、ほとんどの飲食店が取り扱っていると言っても過言ではありません。
そんな鯛の中でも話題になっているのが、愛媛県宇和島産の養殖真鯛「鯛一郎クン」。養殖でありながら、天然真鯛にも匹敵するといわれ、テレビや新聞でも取り上げられている、今話題の食材です。
鯛一郎クンの持つ魅力とその可能性について、生産者である徳弘水産の徳弘多一郎社長にお話をうかがいました。

鯛一郎クンの生みの親、徳弘多一郎社長
鯛一郎クンはどんな魚?天然にも負けないブランド養殖真鯛
愛媛県の宇和島は、豊後水道の海域に面し、美しいリアス式海岸が広がる地域です。この辺りでは、昔から鯛の養殖が盛んに行われていました。
その中でも鯛一郎クンは、独自にブレンドした特別なエサと、徹底した生産管理により、養殖の域を超え、天然真鯛にも引けをとらないおいしい真鯛だと、広くご好評をいただいています。

青々と広がる宇和海
<鯛一郎クンの特徴>
- 養殖真鯛特有の臭みが無い
養殖真鯛独特の臭みを嫌う方も多いと思いますが、独自のエサと徹底した生育方法により、鯛一郎クンは生でも焼いても、ほとんど臭みが出ることはありません。
- 天然真鯛にも劣らない引き締まった身
脂がのった引き締まった身をしているため、一般的な養殖真鯛よりもモチモチしており、天然真鯛にも劣りません。火を通しても身に脂がしっかり残るので、ふっくらとした味わい深い食感が楽しめます。

丸々と太った鯛一郎クン!
- 日持ちをするため使い勝手が良い
数日寝かせても、養殖真鯛特有の臭いはほとんど出ることはありません。むしろ日が経つにつれてうまみ成分のイノシン酸が増加し、熟成が進みます。
刺身で提供する場合、締めた当日ももちろん美味しいですが、熟成のうまみを味わっていただくならば、2、3日寝かせてからのご提供をおすすめします。
- 年間を通して安定供給が可能
天然真鯛は時期によって品質や価格が変動することがありますが、鯛一郎クンは年間を通し、2kg前後のサイズのものを一定の価格で提供できるため、仕入の不安はありません。

カゴに入る鯛一郎クン

出荷を待つ鯛一郎クンたち
鯛一郎クン誕生まで
元々この地で養殖を始めたのは、先代である初代徳弘社長で、私は父の後を継ぎ、二代目として養殖を行なうことになりました。
父は、日本人の誰もが好きな魚、ということで、真鯛養殖の道を選んだようですが、私はそれだけでなく、この鯛という魚が、我々にとって特別な意味を持った魚ではないか、という考えのもと、養殖業を営んでいます。
七福神のえびす様が抱える魚として描かれたり、お供え物に使われたり、鯛は昔から、他の魚とは違う、特別な意味をもった魚であるように思うのです。「花は桜木、魚は鯛」、「鯛は横綱、平目は大関」などという言葉もあるくらいですから。

徳弘水産の名刺にも印刷されている、鯛を担ぐえびす様と大黒様。初代社長の直筆のイラスト。
特別な魚である鯛に、色々な機能性や付加価値を見出せるようにしたい、そんな想いもあって、家業を継いでから10年以上、養殖技法の研究を行ってきました。
結果、時間はかかりましたが、ついに天然真鯛にも負けない養殖真鯛、「鯛一郎クン」を開発することに成功したのです。
名前の由来はお分かりかと思いますが、私の「多一郎」という名前をもじっています。
なぜ「クン」と付いているのか?と聞かれることもあるのですが、これは単純に、自分の名前を色々な人から呼び捨てにされているようで嫌だなあ、と思って付けた敬称の「クン」です(笑)
決め手はエサ、天然を超える養殖真鯛を生み出した技術力
鯛一郎クンは、想像していた養殖真鯛とはまったく味が違う!と、食べていただいた方からよく言われます。身の引き締まり方、弾力、脂ののり方、そして何より、養殖特有の臭みがほとんど無いことに驚かれる方が多いです。
これらは主に、与えているエサによる影響が大きいです。鯛一郎クンには、エビや日高産の昆布、いかすみをはじめとした、30種類以上の原料を独自にブレンドして作る、特別なエサを与えています。
この特別なエサが、養殖真鯛特有の臭みを取り除き、弾力のある真鯛に成長させてくれるのです。

エサをやる多一郎社長と鯛一郎クン群
特別なエサの開発は、それこそ大変な「技術」が必要でしたし、時間もかかりました。
養殖臭を無くすということで言うと、調理の工夫次第で、今までもある程度臭いを緩和することは出来ていたと思います。
けれどそのままでは、養殖真鯛のおかれている状況の本質的改善にはなりません。
養殖真鯛の根本的概念を変えるためにも、養殖真鯛自体から臭いを無くし、天然に近い身を作り上げるというのが、養殖を行う上での私のこだわりでしたし、そのために追及した技術で開発できたのが、まさしくこの特別なエサなのです。
私は思うのです、時代が移り変わる中、従来通りのやり方だけでは、いずれ世の中から淘汰されてしまうのではないか、むしろ、技術力を持ったものが、時代の大きな流れを作っていくのではないかと。
今こうやって鯛一郎クンと言う養殖真鯛のブランドを確立できたのも、そういった志を持って、唯一無二の「技術」を探し出すことができたからだと感じますね。
漁業における天然と養殖の壁とこれからの養殖真鯛
漁業の世界ほど、天然と養殖に厳しい世界は無いと思います。実際に皆さんが肉を食べるときに、天然だということにこだわったりしますでしょうか?むしろ、松坂牛、近江牛、名古屋コーチンなど、ブランド名を気にするのではないでしょうか?
しかし良く考えてみてください。ブランド名があるということは、これらは全て養殖です。
農作物もそうです。コシヒカリもひとめぼれもあきたこまちも、全てがお米農家の方によって作られている、いわば養殖品なのです。
思うに肉や農作物は、天然のものを食べる習慣が無いため、天然と養殖という概念で考えないのかもしれません。それに対し魚は、天然のものを獲って食べるという習慣が今なお根強いため、天然と養殖の2軸で考えてしまうのかもしれません。
養殖にマイナスのイメージを持たれがちな漁業ですが、畜産・農業などの言葉を借りると、養殖魚とは、漁業生産者が手塩にかけて育て上げた一流ブランド品、とも言い換えられると思います。
手を掛ければかけるほど、どこまでも美味しいものを作り上げられる。これが養殖のメリットです。
養殖のプラスイメージを広げていくため、我々生産者側も、ブランド品を生産している、という高い意識で、養殖業に取り組んでいく必要があるでしょう。

徳弘社長の想いと宇和島の自然が、鯛一郎クンを育て上げている
私の今後の取り組み目標は、なんと言っても、鯛一郎クンと同品質の、兄弟シリーズの養殖魚を開発・展開することです。
鰤二郎クン、カンパチのカン三郎クン、平目の平四郎クン、シマアジ五郎クン…。サーモンの養殖にも挑戦してみたいですよね。
養殖魚だから、ではなく、養殖魚がいい、そう言ってもらえる時代が来るよう、これからも養殖の品質を高め、可能性を広げていけるように頑張ります。
鯛一郎クンの取り扱いについて
Q.鯛一郎クンの食べ頃は?
締めたその日ももちろん美味しいですが、他には無い味わいという意味では、2、3日寝かせたくらいがおすすめです。
鯛一郎クンは日が経つにつれて熟成し、うまみが増すんです。臭みの心配もほとんどありませんから、あえて2日目以降の鯛一郎クンしか使わないというお店もあるくらいですよ。
Q.鯛一郎クンのオススメレシピは?
なんと言ってもまずは刺身です。鯛一郎クンの味わいをダイレクトに感じていただくには、刺身でのご提供が一番だと思いますから。
半身をとっておいて、1日目、2日目、3日目…と、熟成具合の違う鯛一郎クンの食べ比べなどもいいですね。味がしっかりしているので、酢飯と合わせて握りにしても美味しいですよ。
あと、火を入れても臭みがほとんど出ないですから、グリルや鯛しゃぶにしても良いと思います。
Q.鯛一郎クンはどうすれば購入できますか?
直接の販売は行っておりませんので、どうぞ下記水産会社を通してご連絡ください。
株式会社 宇和島水産
電話番号:03-6432-4030
営業時間:平日9:00~17:30(土・日・祝日を除く)
>宇和島水産ホームページへ
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有限会社 徳弘水産
1988年5月に設立した、愛媛県宇和島市の真鯛養殖会社。創業時は真珠養殖も行っていたものの、真鯛養殖に転換して現在に至る。
『鯛一郎クン』の販売が開始されてからは、従来の養殖の概念を覆す魚だとして話題になり、その生産方法に注目が集まる。以降『鯛一郎クン』は数々のメディアで養殖ブランド魚の代表格として取り上げられている。
有限会社 徳弘水産